使いこなしのテクニックエフェクターの基礎知識 ~コンプレッサー~ 各パラメータの意味を理解して、サウンドに思い通りの効果をつけてみよう
コンプレッサーは、音を圧縮するエフェクターです。
音量レベルを均一化して全体のばらつきを抑える効果があるので、ボーカルトラックなど音量が一定になりにくいパートに対して個別でかけて均一化したり、ミックスダウン後のデータの最大がピーク値に達しているが、全体の音圧が足りない場合など、マスタリングの時にも使用します。また、音の頭の部分を強調したい場合や、音を伸ばしたように聞かせるなど、音作りのためにこの効果を利用することもあります。
[1]THRESHOLD(スレッショルド)
コンプレッサーでは、あるレベルを超えた音に対して圧縮をかけていきますが、その「あるレベル」を設定するのがこの「THRESHOLD(スレッショルド)」です。
最大音量を0dB(デシベル)と定義し、0.0〜-100.0dBまでの数値を設定することが可能です。数値を下げるほど、編集対象範囲は広くなり効果も大きくなります。
dB表記
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0dB
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-1dB
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-2dB
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-3dB
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-4dB
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-5dB
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-6dB
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・・・
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-9dB
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・・・
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-12dB
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%表記
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100%
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89%
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79%
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71%
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63%
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56%
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50%
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35%
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25%
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ここでは最大音量を0dBと定義していますが、エフェクターによって0dBの定義が異なる場合があります。
スレッショルドを上下した際に圧縮される範囲
コンプレッサーでスレッショルドを上下させることで、圧縮の対象となる範囲を設定することができます。
[2]RATIO(レシオ)
スレッショルドで設定した圧縮対象範囲の音声に対して、実際にどれくらいの圧縮をかけるのかを決めるのが「RATIO(レシオ)」です。
現在の圧縮していない状態を「1」と定義し、それに対してどれくらいの圧縮をかけるのかを1~64の範囲で設定することが可能です。レシオの値が1の場合、1:1ということになり、圧縮はかかりません。数値が高くなればなるほど、圧縮率は高くなります。
レシオを調整した際の波形の変化
コンプレッサーでレシオの値を上げると、圧縮対象範囲に対する圧縮率が上がります。
[3]ATTACK(アタック)
スレッショルドで設定した値を超える音声が入力された場合、圧縮を開始するまでにかける時間を設定します。
出だしの部分を強調したいときなどに有効です。0~20までの値が入力可能となっており、単位はms(ミリセカンド[ミリ秒])です。
アタックタイムを調整した場合
スレッショルドを超えた地点から圧縮をかけるまでの時間を設定します。アタックタイムを設定すると最初の部分が圧縮されない為、アタックの強い音づくりが可能です。
[4]RELEASE(リリース)
入力レベルがスレッショルドよりも低くなってから、圧縮をやめるまでにかける時間を設定します。
音が伸びたように聞こえる効果があります。0.01~2.00までの値が入力可能となっており、単位はs(セカンド[秒])です。
リリースタイムを調整した場合
スレッショルドを超えた地点から圧縮をかけはじめるまでの時間を設定します。リリースを設定すると最後の部分の相対的な音量が上がり、音が伸びたように感じます。
[5]CONTROL(コントロール)
ステレオ信号の左右のチャンネルの圧縮率をそろえます。ステレオのデータにコンプレッサーをかける場合は、オン(緑点灯)にしておいたほうが良いでしょう。
[6]アウトプット
[1]~[5]の設定によって加工された音声を出力するレベルを調整します。
ATTACKを設定している場合、スレッショルドを超えてもしばらくは圧縮をかけませんので、その部分に関しては、最大値は-6dBよりも高くなります。RELEASEの場合も同様です。
ATTACK、RELEASEを「0」にした場合、波形の最大値が-6dB(50%)になることが確認できます。ですので、ATTACK、RELEASEを「0」にする場合は、アウトプットを +6dB(200%)に設定するか、ノーマライズを実行してレベルを調整することをお勧めします。
マウスでつまみを回す操作では、狙った数値が設定しにくい場合があります。つまみを右クリック (Macの場合は、[option]+クリック) すると、直接数値を入力することが可能です。
プリセットについて
あらかじめ用意されているプリセットを例に、どのように設定をすれば良いかを参考にしましょう。
Mastering1

-3dB(71%)以上の音声を1/2に圧縮しています。
アウトプット値を+6dB(200%)に設定すると、加工後の音声のピーク値が0dB(100%)になります。
VOCAL
ボーカル用のプリセットです。
スレッショルドが-50dB(0.3%)の、ささやくような小さな声までも圧縮の対象とし、1/4に圧縮しています。歌い始めの声がつぶれないようにアタックを2.2(ミリ秒)、最後の余韻が残るようにリリースが0.9(秒)に設定しています。


ABILITY/Sound it!では、自分で好みのプリセットを作成して保存することが可能です。 テクニカルサポートデータベース:「エフェクターのプリセットを作成したい」を参照して下さい。
その他のCompressor系エフェクター
各エフェクターの使用例は、Sound it! Lesson をご覧ください。
Multi Compressor
周波数帯域を4分割し、それぞれの帯域ごとに最適なコンプレッサーの値が設定できます。
*ABILITYシリーズ / Sound it! 8 Premiumに付属
RMS Compressor
RMS(実効値)によるレベル検出で聴感上の音圧感に近い圧縮効果が得られます。
*ABILITYシリーズ / Singer Song Writer Lite 9 / Sound it! 8 Premiumに付属
Maximizer
主にマスタリング用として全体の音圧を上げるときに使用します。
*ABILITYシリーズ / Singer Song Writer Lite 9 / Sound it! 8 Premiumに付属
Sonnox Limiter
最大レベルを制限したり、音圧を得る場合に使用します。(Sonnox社 Limiter)
*ABILITYシリーズ / Sound it! 8 Premiumに付属