使いこなしのテクニックエフェクターの基礎知識 ~イコライザ~ 各パラメータの意味を理解して、サウンドに思い通りの効果をつけてみよう
イコライザは、特定の周波数成分を強めたり弱めたりして、音質を変化させるエフェクターです。
変化させたい周波数範囲の指定方法には、シェルビングとピーキングがあります。シェルビングには、指定周波数よりも低い周波数成分を一様に変化させるローシェルビングと、指定周波数よりも高い周波数成分を一様に変化させるハイシェルビングがあります。ピーキングは、指定周波数を中心にした狭い範囲の周波数成分を変化させることができます。下図にある各番号のパラメータについて、説明していきます。
また、イコライザは、同じつまみやボタンが上下段にわかれて2つずつ用意されています。このイコライザでは、1回の編集につき、2つの異なるタイプのイコライザを同時に使用できます。
[1]ローシェルビングイコライザ(Low Shelving Equalizer)
ローシェルビングイコライザは、[4]フリケンシーで設定した周波数以下の音量を[5]ゲインのつまみによって上げ下げします。主に低音を増幅/低減するために使用します。
ローシェルビングイコライザでフリケンシーを調整した場合
フリケンシー値を上下させることで、音量を上げ下げする周波数の境界を設定することができます。
ローシェルビングイコライザでゲインを調整した場合
設定された周波数以下の音量を上げ下げしています。
[2]ハイシェルビングイコライザ(High Shelving Equalizer)
ハイシェルビングイコライザは[4]フリケンシーで設定した周波数以上の音量を[5]ゲインのつまみによって上げ下げします。主に高音を増幅/低減するために使用します。
ABILITYなどで、各オーディオトラックごとにイコライザをかけると、それぞれのトラックのサウンドにキャラクターを付加することができます。
ミックスダウンされたデータに対してかける場合は、よくコンポやラジカセについている「Bass」や「Treble」のつまみと同じような効果をだすことが可能で、全体的に重低音なサウンドにしたり、逆に中高音を強調し、すっきりしたサウンドに仕上げることができます。
ハイシェルビングイコライザでフリケンシーを調整した場合
フリケンシー値を上下させることで、音量を上げ下げする周波数の境界を設定することができます。
ハイシェルビングイコライザでゲインを調整した場合
設定された周波数以上の音量を上げ下げしています。
[3]ピーキングイコライザ(Peaking Equalizer)
ピーキングイコライザは、[4]フリケンシーで設定した周波数を中心に音量を[5]ゲインのつまみによって上げ下げします。
例えば、50/60Hzのハムノイズを集中的に低減したり、ボーカルの周波数帯の音量を上げて前に出すなど、様々な活用方法があります。ピンポイントに狙った周波数帯を変化させることができ、それ以外の周波数帯に与える影響が少ないという反面、狙った周波数をはずしてしまうと、効果が出にくいう特性もあります。
中心周波数が固定されているグラフィックイコライザに対し、中心周波数と帯域幅(Q)が独立して可変できるピーキングタイプのイコライザをパラメトリックイコライザと言い、グラフィックイコライザよりも細かな調整が可能です。
ピーキングイコライザでフリケンシーを調整した場合
フリケンシー値を上下させることで、音量を上げ下げする周波数帯の中心を設定することができます。
ピーキングイコライザでゲインを調整した場合
設定された周波数帯を中心に音量を上げ下げしています。
[4]フリケンシー(FREQUENCY)
日本語で「周波数」の意味です。データにも依存しますが、各周波数帯がどのような役割を果たしているかを参考に調整をおこなって下さい。

パートごとの周波数分布
左図はあくまで目安です。個人差や、楽器の個体差があります。また、倍音成分などを含めるともっと幅広い周波数帯に分布します。
一般的に20Hz~20KHzが人間の可聴範囲と言われており、その中でも、3KHz付近の音が一番聞きとりやすく、120Hz以下の低音や5KHz以上の高音は聞き取りにくいと言われています。
~50Hz
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低音の振動に近い帯域。ほとんど耳には聞こえないが、下げすぎると迫力に欠け、上げすぎると圧迫感が出る。 |
50Hz~80Hz
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音に重みを出す帯域。強すぎると透明度がなくなる。 |
80Hz~250Hz
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低音の輪郭を出す帯域。下げすぎると低音がぼやけてしまう。 |
250Hz~500KHz
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中音域の安定感を担う帯域。下げすぎると薄っぺらな印象を与えてしまう。 |
500Hz~800Hz
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中音域のアタック間を出す帯域。音域のほぼ中心で芯になる。 |
800Hz~5KHz
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中音域の高いアタック間を出す帯域。人間が一番聞き取りやすく、下げすぎるとシャープさを失う。 |
5KHz~10KHz
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金属的なシャリシャリ感を出す帯域。下げすぎると鮮やかさを失う。 |
10KHz~
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華やかさを出すのに必要な帯域。ほとんど耳には聞こえないので、少なめでもあまり不自然さを感じない。 |
[5]ゲイン(GAIN)
日本語で「増幅度」の意味です。増幅度=1倍(増減無し)を0dB(デシベル)と定義し、-12dB~12dBまでの数値を設定することが可能です。
dB表記
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-12dB
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-9dB
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-6dB
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-3dB
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0dB
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3dB
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6dB
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9dB
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12dB
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倍数表記
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0.25倍
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0.36倍
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0.5倍
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0.7倍
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1倍
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1.4倍
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2倍
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2.8倍
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4倍
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%表記
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25%
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36%
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50%
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70%
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100%
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140%
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200%
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280%
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400%
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各オーディオトラックに個別でイコライザをかけて積極的に音作りを行なうとき以外は、数値は0.3~1.0程度に抑えておく方が良いでしょう。
[6]キュー(Q)
帯域幅を指します。
ABILITY/Sound it!のイコライザでは0.3~10.0まで設定することができ、数値が高いほど範囲は狭くなります。
- ピーキングイコライザでQを調整した場合のイメージ図
ピーキングイコライザでは・・・
Qの数値を高く設定すればするほど、山の幅はせまくなり、指定した周波数帯をピンポイントで集中的に変化させることができますが、狙いをはずすと効果が分かりにくくなります。
ピーキングイコライザでQを調整した場合
設定された周波数帯を中心に音量を上げ下げしています。
例えば・・・
「50Hzのハムノイズを除去する」など、ある狭い範囲の決まった周波数帯に対して集中的に変化を与えたい場合などは、図1のように幅を狭くすることで、他の周波数帯には影響を及ぼさずに編集することが可能です。
ただし、図2のように設定した周波数(フリケンシー)の設定値が少しでもずれた場合や、図3のような広い範囲の周波数帯に効果を与えたい場合は、幅を狭くすると効果を感じられなくなったり、くせのある音になってしまうことがあります。
- ローシェルビングイコライザでQを調整した場合のイメージ図
ローシェルビング/ハイシェルビングイコライザでは・・・
Qの数値を高く設定すればするほど、クセのある輪郭がはっきりした特徴的な音になります。これをレゾナンス効果といいます。
ローシェルビングイコライザでQを調整した場合
Qの値が低い時はなだらかな曲線ですが、値を上げるにつれ肩のように曲線がもりあがってきます。これをレゾナンス効果といい、輪郭のはっきりしたクセのある、特徴的な音になります。
各オーディオトラックに個別でイコライザをかけて積極的に音作りを行なうとき以外は、数値は0.3~1.0程度に抑えておく方が良いでしょう。
マウスでつまみを回す操作では、狙った数値が設定しにくい場合があります。つまみを右クリック (Macの場合は、[option]+クリック) すると、直接数値を入力することが可能です。
プリセットについて
あらかじめ用意されているプリセットを例に、どのように設定をすれば良いかを参考にしましょう。
50HumCut
これは、東日本の商用電流50Hzの「ブーン」という電源系のノイズを低減するためのプリセットです。50Hzの周波数を中心に帯域幅を狭くし、音量を最大限に低減する設定にされており、上下段とも全く同じ数値です。同じフィルタを2回かけることで、-12dB×2=-24dBとなり、より強く50Hzのノイズを低減しようとしていることが分かります。


Radio
これは、小型ラジオから聞こえてくる音のような効果を出すプリセットです。ラジオでは、低音域と高音域が聞こえにくいことから、ローシェルビングイコライザで低音域を、ハイシェルビングイコライザで高音域を低減しています。


Female_V
これは、女性ボーカルに張りを持たせるためのプリセットです。
ピーキングイコライザでは、女性ボーカルの中心の周波数帯域の音量を上げています。また、ハイシェルビングイコライザでは、約5KHz以上の周波数帯の音量を上げることで、全体に華やかさを出します。


ABILITY/Sound it!では、自分で好みのプリセットを作成して保存することが可能です。 テクニカルサポートデータベース:「エフェクターのプリセットを作成したい」を参照して下さい。
さらに多機能なイコライザ
各エフェクターの使用例は、Sound it! Lesson をご覧ください。
6Band EQ
独立した6つのイコライザを自由に組み合わせて使用できます。
Sonnox EQ
ローパス、ハイパスフィルタと、ロー、ミッド、ハイの3バンドのパラメトリックイコライザで構成されたSonnox社のイコライザです。